月星光博月星 光博
(つきぼし みつひろ)

略歴

1977年 大阪大学歯学部卒業
1981年 京都大学医学部大学院卒業
1982年 月星歯科クリニック開設
1998年 米国ロマリンダ大学歯学部非常勤講師
2009-2010年 国際外傷歯学会会長
2012年 米国ウエスタン大学歯学部臨床助教授
2013年 大阪大学歯学部非常勤講師
2015年 東北大学歯学部臨床教授

トランスプラントBefore インプラント

自家歯牙移植に関して専門的な教育を受けたことのない我々は、少なからず移植に対して偏見と躊躇が、逆に教条的な憧れがあるように思います。歴史的には夢と希望が入り交じった、いまだ未完成の歯科学問領域であるかもしれません。しかし、近年自家歯牙移植が見直されつつあります。理由としては、自家歯牙移植を成功に導くための生物学的原則の確立の発展と、多くの長期症例データによる臨床的予知性の高さがあげられます。

自家歯牙移植は、同一個人においてある部位から別の部位へ外科的に歯を移動する処置ですが、同じ歯槽窩内で歯の位置や傾斜を外科的に変更させる外科的矯正もこの範疇に含まれる処置です。また、何らかの理由によりいったん歯を抜歯し、口腔外で治療を行った後に元の歯槽窩に戻すような治療(意図的再植)も自家歯牙移植の一つと考えられます。

このように移植にはいくつかの治療法があり、多くの適応症の可能性があります。インプラントというきわめて予知性の高い治療法が歯科を席巻しつつある現在、安易な抜歯が危惧されます。しかし、その前に自家歯牙移植による歯と歯列の保存的治療の可能性を検討してみてもよいかもしれません。

講演では、移植の創傷の治癒、術式、適応症、予後について分かりやすく解説いたします。また、時間の許す限り、外傷歯治療、MTM、歯内療法など、1本の歯を残すための重要な歯科治療についても考察したいと思います。